浦和法律事務所ブログ

当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

「特定秘密保護法」は廃止にするしかない(1)

国際人権規約をご存じだろうか。
さまざまな人権に関する条約の基本となるもので、 
1966年に国連総会で採択され、日本は1979年にこれを批准した。

国際人権規約は社会権規約と自由権規約からなる。
自由権規約19条は、
  すべての者は「表現の自由」を有する
とする。
この表現の自由の中には、
  「あらゆる種類の情報を求め、受け、伝える自由(いわゆる知る権利)」
も含まれる。
但し、この自由は、
  「国の安全の保護」等のため必要な場合は一定の制約を受けざるを得ない
とする。

そこで
「安全保障のための秘密保護」の目的で「知る権利」を制約せざるを得ない場合
の要件について、
世界70か国以上から500人を超える専門家が関わり2年以上かけて議論した結果、 
20136月に南アフリカのツワネという都市で、
国際連合を初め22の団体が採択したのが
「ツワネ原則」
と呼ばれるものであり、いわば現在の国際基準である。

日本国憲法は、98条で、
  日本が締結した条約は誠実に遵守しなければならない
とする。
したがって、日本政府は国際人権規約を遵守するのは当然のこと、
国際連合の加盟国として、
国際連合が採択した「ツワネ原則」も遵守しなければならない。


さて、昨年1213日、多くの反対意見を無視して、
衆参両院ともわずか数時間の審議で強行採決のすえ
「特定秘密保護法」が成立したのはご承知のとおりである。

本年7月、国際人権規約委員会が「ツワネ原則」に基づき、
日本政府に対し、「特定秘密保護法」に関する勧告意見を出した。
そして、本年1210日の「特定秘密保護法」の施行を前に、
日本政府は、先日、「運用基準」を発表したが、
それは、国際人権規約委員会の勧告意見をも全く無視した内容である。


次回の私の担当コラムで、「運用基準」の内容とその問題点について、
「ツワネ原則」に照らし合わせながらご紹介したい。

浦和法律事務所とともに歩んで25年

当事務所は来年創立30周年を迎えます。

遡れば、1985年に桜井、神山、鈴木の3名の弁護士による共同事務所として創立され、
5年後の1990年に深田弁護士と私が新人弁護士として同時に入所しました。
したがって、私自身は来年3月で弁護士25年となります。

その後、1993年に村木弁護士、2001年に沼尻弁護士、 
2005年に吉岡弁護士、2006年に水口弁護士、2010年に楢原弁護士、
2011年に河原崎弁護士、2012年に柳沢弁護士、2014年に板垣弁護士
が入所する一方、何人かの弁護士が退所するなどし、
現在では、
  鈴木、堀、沼尻、吉岡、水口、河原崎、柳沢、板垣
8名の弁護士となっています。


ところで、この間、私たち弁護士を取り巻く環境は大きく変わりました。


例えば、私が弁護士になった頃は、
裁判所への提出書類が手書きからワープロで作成したものに移行しつつあったのですが、
今や手書きの書面はおろか、ワープロ自体も目にすることはなく、
完全にパソコンに取って代わられました。

書式もほとんどがB4袋とじ縦書きであったのが、すべてA4横書きとなりました。

書類の提出方法も、持参又は郵送に限られていましたが、
今ではファックス送信も認められています。

さらに、遠隔地での裁判ですが、
期日には裁判所に出頭しなければならず、
場合によっては泊りがけで出かけることもありましたが、
これも電話での会議が実施されるようになりました。 

制度面においても、
 当番弁護士制度
 被疑者国選
 裁判員裁判
 日本司法支援センター(法テラス)の創設
等々、大きな変革をもたらしています。


他方、司法試験の合格者が20年ほど前までは約500名だったのが、
今や約2000名に増えたことに伴い、弁護士数も大幅に増えました。

埼玉弁護士会についていえば、
私が弁護士登録した頃の弁護士数は約200人でしたが、
今や700人を優に超えて800人に迫ろうとしている状況です。


こうした状況は、一見、依頼者にとって好ましい状況に見えますが、
決してそうではありません。
弁護士の増加に伴い、弁護士の宣伝広告が解禁となり、
弁護士へのアクセスは飛躍的に容易となりました。
しかし、適正人数を超える弁護士数は、
選択のリスクを依頼者に負わせることにもなるのです。


ちなみに、当事務所(浦和法律事務所)は、
事務所名に「浦和」と名がつく事務所の中では最も古く
(冒頭で述べたごとく、来年創立30周年を迎えます。)、
さいたま浦和法律事務所、浦和総合法律事務所、浦和東口法律事務所
などとは別の事務所です。
この他、
浦和シティ法律事務所、浦和サライ法律事務所、
浦和ふたば法律事務所、浦和ときわ法律事務所、
南浦和法律事務所、中浦和法律事務所、
武蔵浦和法律事務所
などとも別事務所ですので、お間違いの無いように。

相続税の大改正間近!

いよいよ年明けから相続税の大幅な改正が行われます。

改正内容の中で、私たちにもっとも影響のあるものは、
  遺産に係る基礎控除の引き下げ
ですよね。 
今回の改正によって
  課税対象者が都心はほぼ全域、埼玉は23割増 
と予測されているとか。

なぜなら、今回の改正では
相続税の課税価格の合計額から控除できる「基礎控除額」が引き下げら
    改正前 ⇒ <5000万円+1000万円 × 法定相続人の数> 
    改正後 ⇒ <3000万円+600万円 × 法定相続人の数> 
となり、なんと4割も縮小されてしまうからです。


こうなると、これまでは相続税を負担しなくてもよかった一般家庭にも
相続税がかかる恐れが出てきました。

どれくらいの相続税が課税される可能性があるのかを
一度計算しておくと安心かもしれません。

事務局i

一票の価値の不平等

さる1126日に、昨年7月に実施された参議院議員通常選挙(東京都及び神奈川県選挙区)の
無効が争われた事件の最高裁判決がありました。

選挙の当時
  1票の投票価値の較差が最大で4.77倍に達していた
といわれる、このときの参議院議員選挙について
上記の最高裁判決は、多数意見として

「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていた」

と断じつつも、

本件選挙までの間に、従前から存在したこのような不平等状態が解消されるための法改正がなされなかったことをもって、国会がその裁量権を逸脱しているとまでは認められない

として、
「本件選挙が違法である」と主文で宣言した原審(東京高裁)の判決を変更しましたが
15人の最高裁判事全員一致の判決ではありませんでした。

原審東京高裁の結論を支持し

「本件定数配分規定は本件選挙当時において憲法に違反し、本件選挙は違法なものである」

とする大橋正春判事をはじめ
4名もの「反対意見」を述べた判事がいたのです。

 
この最高裁判決は、参議院議員選挙に関するものでしたが
理論上、1票の投票価値の平等がより厳格に守られるべきであるとされる
今回の1214日実施予定の衆議院議員選挙についてはどうなのでしょうか。



実は、衆議院議員の定数配分については、
20113月になされた最高裁の判決を踏まえて、
選挙区定数是正のための法改正が一応、進められはしました。

その結果、いわゆる「05減」の定数割り振りを柱とする法改正がなされてはいます。

しかしながら、上記の法改正は、前述の20113月になされた最高裁判決が
「投票価値の格差を生みだす主因」
として強く問題視した、いわゆる「一人別枠方式」が実質的に残っており
(人口最少の鳥取県を1議席ではなく2議席とする)
是正の結果、かろうじて2倍未満に較差が縮小されるとはいえ
いかにも「姑息」「その場しのぎ」との印象はぬぐえません。

したがって、今回の衆院選も、この改正法にもとづいて行われる限り
依然として、従来と同じ違憲の問題が生じることになります。



前述の1126日の最高裁判決でも
大橋判事が、次のような「きつーい」一言を、反対意見の中で述べておられます。
 

『関係者の主観的意図は別として、国会の行動は、外形的には、定数配分規定の憲法適合性が問題になると当面の選挙を対象とした暫定的措置を採って抜本的改革は先送りし、次の選挙が近づき定数配分規定の憲法適合性が問題になるとまた暫定的措置を採るのみで抜本的改革を先送りするということを繰り返しているように見える。』



昨年1120日の最高裁判決(2012年衆院選をめぐるもの)において
鬼丸かおる判事が述べられたとおり、 
『衆議院議員を選出する権利は、選挙人が当該選挙施行時における国政に関する自己の 意見を主張するほぼ唯一の機会』 
であって、

『国民主権を実現するための国民の最も重要な権利』 
であるが、
投票価値に不平等が存在すると認識されるときは
選挙結果が国民の意見を適正に反映しているとの評価が困難になるのであって、
衆議院議員が
『国民を代表して国政を行い民主主義を実現するとはいい難くなる』
ものである。
以上の理由により、
『憲法は、衆議院議員の選挙について、国民の投票価値をできる限り11に近い平等なものとすることを基本的に保障している』
ものというべきです。


かかる憲法上保障された基本的権利を重要視せず
是正の不備・不十分を「裁量の範囲内」などと開き直り
その違憲状態を司法によって指摘されるや「立法権の侵害だ」などとうそぶくに至っては、
「政治的理由や都合によって、憲法を無視してもかまわない」
と言っているに等しい。

これこそ、閣議決定によって解釈改憲が可能であるとするどこぞの内閣の発想と
軌を全く一にするものです。


技術的に不可避的に生じうる較差を別として
一票の投票価値は「できるかぎり11に近い」ものとすべきであり
そうではなく事実上の一人別枠方式を残存させることにより
「意図的に」不平等を作り出す仕組みの下でなされる今回の衆議院議員選挙は
始めから違憲・違法なものであり無効なものであることが予定されているといえ
それ自体が、憲法と司法権に対する重大な挑戦とさえ、いえるのではないでしょうか。